「試用」する教員はどうやって選抜するのでしょうか?
現在の採用制度では、県内の必要人員数を県が実施する採用選抜試験でまとめて合格させ、配属校は県教委が決定しています。
現場校長は、県が配属任命した教員を「受け取って」学校運営を行います。
昔でいう条件付採用期間に特に大きな問題がなければ、正式に採用となります。
つまり、今回提起されているのは、この条件付採用期間は「准免許」として、本採用で「本免許」となるということなのだと思います。
違うのは、その条件付期間を3〜5年と、随分と長くするということです。
さすがにこれだけ長い期間試されるのであれば、その人物の、“いろいろなこと”が分かるでしょう。
ただし、いまや給与面でも一般公務員と大差なく、不人気職種になりつつある中で、長い時間「観察され続ける」採用システムを若者達が敬遠するのではないかと心配です。
むしろ、私学協会などが実施している採用システムの方が優れているような気もします。
http://www.ritsumei.jp/kyoshokushien/pdf/kyoshien_06_01.pdf#search=
これを参考にすれば、まず県レベルで客観的「適性検査」を実施し、その結果を登録(採否判定はしない、センター試験のようなもの)し、各学校にリストを提供します。同時にその成績は志願者自身にも公式文書で提供します。
志願者は自分が就職したい公立学校に直接出向き、校長面接等を受けて採否が決定されます。
ここで“競争原理”がはたらきます。
人気のある学校には応募者が殺到し、選抜の必要性が発生します。ここで、「面接等」の“等”が重要になります。応募者に模擬授業や学校生活で起こり得る事象に対する行動力や考え方などを問うシミュレーションを課すなどし、最終的に最もその現場が必要するタイプの教員を採用すれば良いのです。
一方、人気のない学校には応募がありません。必要な人員が応募しないのでは学校運営に支障が起きます。県は、全県の「欠員」状態の情報を希望者に公開します。他校で不採用になった応募者が応募してきます。
ここでは2つの競争が発生します。魅力のない学校には応募がありません。また魅力のない応募者は採用されません。
こういう場合、“情実”が横行する危険があります。故に、決定権は校長にあるとしても、行政は学校に「選抜委員会」などを設けさせて、採用の客観性・公平性・妥当性を確保する必要があります。
私が実際知ったことを例示すると、知り合ったある教育系大学の学生で、塾などで長く働きながら、公立私立ともに採用試験を受けた若者がいました。
塾などでも生徒・保護者から信頼され、模擬授業などでも常に好成績で、ひねくれ者の私から見てもうらやましいほど、努力家でバランス感覚を持って事にあたっています。
有名私立高校の何校かを受け、高い競争率のなかで最終選考まで残りながら、最終的には某中高一貫私学に就職しました。
実は、この過程で受験した東京都の採用試験では、2次試験で不合格になりました。
本人は、自信家ではありませんが、不合格の理由を知りたいと言っていました。
東京都が先述したような方式を採用していれば、彼はどこかの都立高校に配属されていたのではないだろうかと思えます。
現場が必要としている人材を、現在の採用方法で本当に保障できているのか、行政は真剣に考えるべきでしょう。
30数年前の大量採用時代に、それこそ多様な個性集団を出現させた私たちの世代は、功罪ありながらも、その多様性によって様々な出来事に立ち向かって来たのですが、それが許されなくなった今日は、行政が現場ニーズに対応できる個性をキャッチできる方法を考える必要があると思います。
「試用」するにしても「准免許」にしても、それぞれの応募者の個性を、それが必要な場所で実際に選べる方法を考えなければ意味がありません・・・。