びーすけ工房でひとやすみ

思うことをびーすけ工房からお送りします。

木工旋盤物語(4)刃物の話

 旋盤に取り付けた木材を高速回転(2000rpm前後)させて、回転体の表面に刃を当てて削ります。
 日本でも平安時代初期には木地師がいて木轆轤(きろくろ)で木製品を製作していたようです。木轆轤では、木地師自身が鍛冶仕事をして「轆轤鉋(ろくろかんな)」を作っていたようで、これは今日でも受け継がれています。

 https://www.youtube.com/watch?v=fulGsTCCT2I&index=7&list=PLFB63F3C54CC7DDBC
 
 https://www.youtube.com/watch?v=obTuSlUboP4
 
 日本の木轆轤では、轆轤鉋の刃が回転する材に対して引く方向で刃を当てているようで、これは日本で使うノコギリが引いて切るのと同じです。
 一方、西洋木工旋盤で使うバイトの刃は、回転に対して押す方向、つまり刃を押し当てるようにします。西洋ノコが押して切るのと同じです。
 
 自然界に対する西洋文明の支配の発想に対して、東洋文明は共存的であるといわれますが、pushとpullでは、やはりpushの方が攻撃的な印象ですね。 
 実際、はじめて木工旋盤に刃を当てに行くときは、何か挑戦的な感覚が起きます。当て損なうとキャッチングといって、刃物が木材に食い込み、下手をすると木材がはね飛ぶこともあります。怖いです・・・!
 和轆轤の木工ではこんなことはあまり起きないのではないでしょうか? 
 もっとも、木工旋盤も段々上達してくると、材をはね飛ばしてしまうようなことも殆どなくなります。(^^♪
  
 余計な話になりましたが、木工旋盤で使用するバイトの使い方にもコツがあります。このコツはやみくもに練習しても身につきません。例え独学でも、上級者の技を学ぶ必要があります。幸い今はYoutubeなどで、映像が公開されていて、それらを手本にできます。
 
 https://www.youtube.com/watch?v=2nPJbi2X77U
 
 〈基本はべベルラビング〉

 簡単にいえば、よく研がれた刃先で、″薄く削る″ように当てて行くということです。回転している材の表面にべベル面をそっと乗せる感じで接近し、接触後、徐々に刃を起こし、研がれた鋭利な刃先が材に触れる感じで切削が開始されます。

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 rubbing(ラビング)は、「こする」という意味ですが、つまりはバイトの刃の側面で材をこするような感触で、「アームレスト」を支点にして、″そっと″刃を起こして削る感じです。鉛筆をカッターで薄く削る要領ですね。

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 バイト(ターニングツール)はその刃の形状が直線のものと曲線のものがあります。スキューなどと呼ばれる直線的な刃は、装飾的な細かい部分の削りに適していて、手彫りのナイフの刃先のような感覚で使うことと、同時に直線の刃を横にして薄く削る(上級者向き)ことも出来ます。刃が直線なので、超硬素材を切り出してグラインダーで刃先を付けるなど自作も可能です。

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 一方、ラフィングとかフィンガーネイルとか、スピンドルとか、いろいろな呼び名の付く物は、刃が曲線で自作はなかなか難しいですが、曲がった刃先を利用して、回転する材を早く削ったり、掘ったり、諸々の作業がスピーディに進みます。刃を当てるには少しコツがいりますが、体感的に覚えてしまえば、いきなり上達した気分になります。

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