びーすけ工房でひとやすみ

思うことをびーすけ工房からお送りします。

いのちを削る

 
 
 昨年の秋、義父の住む群馬の山荘で立木の伐採をしました。
 
 
 大きな山の木が母屋に覆いかぶさり、危ないということで。
 
 
 山桜、楢、樅など、、、
 
 
 倒してみると、大変な重さ。
 
 
 チェーンソーで幾つかに分けて、ワゴン車の荷台に載せて自宅に持ち帰りました。
 
 
 
 木工旋盤で木製の器類を作るまねごとをしているので、持ち帰った材木を乾燥させて試用してみるつもりであったのです。
 
 
 3月。暖かくなった休日に引きずり出して、さらにチェーンソーで旋盤に掛けられるサイズに加工し、幾つかの“作品”にトライしました。
 
 
 勿論、目標とする作品に到達することが第一なのですが、ことはそう簡単ではありません。
 
 
 半年程度では十分な乾燥は得られていないので、加工し終わった側から、ひび割れが始まりますし、樅などはヤニで加工どころではありません。
 

 山桜は非常に加工性が良く、明るく美しい木肌と肌触りであるのですが、はやり乾燥半生の素材では、芯に残る水分の膨張で表側に次々ひび割れが入ります。
 

 
 楢も、製材過程ですぐに激しいひび割れがはじまり、しかもほどほどの乾燥状態で旋盤加工をはじめても、その堅さに閉口します。バイトと呼ばれる彫刻刀の親分みたいな刃物で削るのですが、研いだ刃が、数分でダメになり、研ぎ8削り2みたいな非常に能率の悪い作業となってしまいました。
 

 
 いやはや、“作品に到達”する遥か以前の段階で足踏みで、これは修行だと我慢できますが、いのちをけずることで、このようにつぎつぎと勉強させられるものなのだと、この歳になって自然界の営みの深さを味わされています。